研究概要 |
1.研究の目的:近代日本の計量関係実物資料の調査を行い,これらの実物資料を実測することから文献上の記載との間に脈絡をつける.そして尺貫法からメートル法に至る経緯を探る. 2.研究経過:本年度は,昨年度に四日市秤乃館,静岡駿府はかり資料館および九州地方6つの博物館から借用した多数の古尺および古枡を実測した.8月に音響式体積計を科学博物館新宿分館に設置した.現在整備し,試用中である.2004年1月に京都歴史資料館に行き,京枡の基準となる原器(御本枡)を調査した.今年度後半には,これまで計量史学会,科学博物館で調査した計量器のデータを補訂編集し,刊行した. 3.古尺および古枡の測定結果:(1)秤乃館の竹製の念仏尺.この念仏尺には狭間隔の目盛りと広間隔の目盛りの2通りの目盛りが刻まれていた.実測の結果,狭間隔の目盛り1尺は曲尺相当の値(折衷尺に近い値)を示し,広間隔の目盛りは其の鯨尺の値を示していた.そして広間隔の目盛は駿府はかり資料館所蔵の念仏尺とほぼ同じ値を示していた.従来は曲尺相当の物差しが念仏尺と言われてきたが,その鯨尺もまた念仏尺と呼ばれていることがわかった.(2)武雄歴史資料館所蔵のビーカーは4進法の目盛が施されており,幕末期にオランダから輸入されたものである.この目盛がどの国の単位に由来したものか文献との対比による推定が進められた.(3)古枡については九州地方の博物館から借用された古枡と科学博物館保管の古枡を測定した.方4寸9分,深さ2寸7分の京枡もいくつか見られたが,大半は明治以降の度制が敷かれた後の枡であった.枡の基準となる1升枡について京枡と判明できるものは4例あった.それらの容積は実測の結果,1776.10〜1812cm^3の範囲でばらついていた.これらの容積は京枡の基準枡と較べると1例以外は小さな値であった.
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