研究課題
平成14年度は研究の準備も含めて以下の研究を行った。時計の社会的意義については、江戸時代の時間意識を文献や画像試料に探ること、また時計の登場に伴う時間規律とは逆の社会概念になる怠惰についての論考を歴史的に解き明かす試みがなされた。また時計の技術的特徴については、三重県松阪市近郊の竹川家に所蔵されている和時計を調査研究した。この和時計は割駒式文字盤を有するものであるが、従来見つかっていた割駒式和時計はいずれも手動であったが、この和時計は自動割駒式になっていることが従来のものとは異なる特徴を備えている。(この和時計とその新規性は本特定研究総括班の鈴木一義氏によって発見されたものである。)この和時計は、幕末から明治初頭にかけて製作されたと思われるが、今のところ正確な製作時期が判明していない。また製作者については、時計内部の柱に「紀府住」「岩野忠之作」と銘が彫られているが、その経歴については現段階ではまったく不明である。和時計は、研究協力者である土屋栄男氏の協力を得て分解調査された。それによれば、割駒を動かす機構は、歯車に偏心円状の溝を彫り、その溝に填まって動く櫛型の長円形板が割駒につながるスポークを広げたり閉じたりすることで、割駒が不定時法に合わせて動く仕掛けになっている。今後は、各部品の寸法を性格に測定するとともに、このメカニズムがどれだけ正確に不定時法を表示することができる精度をもっているのか確認をしていく予定である。また同様のメカニズムを有する時計の調査も可能であればしていく予定である。
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