本年度は東京大学史料編纂所蔵の外務省引継文書・維新史料編纂局引継文書、東京都立中央図書館蔵の近藤記念海事文庫、広島県立文書館蔵の小野友五郎文書、陽明文庫蔵の芦名重次郎文書の調査を行って目録を作成した。このうち複写したのは小野文書・芦名文書で、小野文書については日記(文久4.2.10〜慶応3.1.19、慶応3.8.1〜慶応4.47)など幕府勘定方(勘定組頭・勘定吟味役・勘定頭取・勘定奉行並を歴任)時代の文書を中心に履歴書及び和算・洋算関係などの文書を複写し、芦名文書については全点を複写した。芦名は幕府勘定方の有司であるから、文庫の性格からして芦名文書はきわめて異質といってよいが、文庫の有に帰した経緯は不明である。なお、芦名文書は東京大学史料編纂所蔵の外務省引継文書にも含まれているすでに藤井哲博『成臨丸航海長小野友五郎の生涯』などで用いられた小野文書と違って、陽明文庫蔵芦名文書は、従来、全く世に知られておらず(目録によれば一部の写本が京都大学文学部内田文庫に所蔵されているが、未整理のため未公開)、41点47冊のうち過半が幕府による蒸気船・洋式帆船導入関係の文書であるから、この文書の存在が明らかになった意義はきわめて大きい。文書の内容は多岐にわたるため、目下、文書ごとに納められた書付などの記録を一点ずつカードにとって整理中である。なお、外務省引継文書・維新史料編纂局引継文書及び近藤記念海事文庫の複写は来年度に行う予定である。
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