研究課題名に記された各調査研究テーマについて次の通りデータ取りと解析・情報処理を行った。 1.【科】について;科とは身体表現つまり演技で、特に江戸歌舞伎の特徴とされる荒事の「見得」について従来の荒武者事説に対して不動明王の種字の身体による表象との仮説を俳優中村又蔵丈と九州大学大学院芸術工科研究院源田悦夫研究室の協力のもとモーションキャプチャー装置で検証した。高蓋然性で実証できたと思われる 2.【白】について;白とはセリフ術で、先行する能狂言のそれと共通するのかしないのかを中村又蔵丈と狂言師善竹十郎師の協力のもと歌舞伎と能狂言を同じ台本で喋ってもらいスペクトログラフで記録した。能狂言は露天小屋時代のもので、現行歌舞伎は木造芝居小屋から引き継がれたものであるが、特に有蓋木造環境の影響の有無をデータ処理によって検証中である。両者間に余り変化がなければ有蓋木造環境以前からとの仮説が立つ。 3.【衣裳】について;平成15年度の有蓋小屋の低照度(100ルックス以下)下における生地(9種)と色彩(12色)の見え方のデータ取りに続いて金銀糸など高反射率の素材を織り込んだ様ざまな刺繍衣裳(京都宇野商店協力)の場合を同様にデータ取りした。データは解析中である。 4.【回舞台】兵庫県南光町の上三河農村歌舞伎舞台の回舞台が予想外に軽々と駆動するので日本トライボロジー学会坪井珍彦氏らの協力を得て回転負荷力の計測と回転機構の精密調査を行い、観念的常識にメスを入れた。 5.【照明】入射自然光のレベルに関しては平成14年度に検証して同年度中に報告書を刊行し、蝋燭照明という一般概念も否定的に検証したが、ヨーロッパや中国にはガスや電気照明以前の古劇場が幾つか残存しているので実態比較するべく西角井正大・松原剛氏の協力のもと予備調査を行った。
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