今年度は、考察年代を18世紀末〜19世紀前半に設定し、オランダ船の輸入品とそれを取り扱った長崎の地役人構成の解明に関する基礎的研究をおこなった。 まず、オランダ船輸入品に関しては、特に染織品の輸入に注目し、日本側・オランダ側の文献史料と共に原物資料であるオランダ側が持ち渡った反物の裂を貼り込んだ「反物切本帳」との照合を通して、実際にどのような染織品がどこで生産され日本に輸入されたのか、日蘭貿易における染織品の輸入実態を解明し、「江戸時代のオランダ船輸入染織品について」と題して発表した。さらに、染織品の内、特に海黄(絹織物)に焦点を絞り、海黄の名称・用途・材質などを解明し、18世紀末から19世紀前半におけるオランダ船の海黄輸入の実態と当時のオランダ側の実情ならびにオランダ船による商品流通を考察した上で、オランダの日本貿易およびそれを介しておこなわれる対日交流に対する姿勢について考え、「江戸時代後期におけるオランダ船の海黄輸入について」と題して発表した。また、オランダ船の輸入品(本方荷物)に関しては、オランダ側の用語と日本側の用語を照合し、その一部を「蘭船積荷物の基礎的研究(増補)」と題して発表した。 長崎の地役人構成に関しては、長崎県立長崎図書館・長崎市立博物館・九州大学九州文化史研究所・東京大学史料編纂所等々に所蔵される「分限帳」「長崎諸役人帳」類を収集し、整理し、分析し、その中から天保期のものを事例として取り上げ、「天保期の分限帳-史料紹介 長崎県立長崎図書館所蔵「分限帳」-(上)」と題して発表した。 来年度は、これらの研究成果をもとに、本研究課題に関する基礎的研究をより充実化させていく予定である。
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