研究課題/領域番号 |
14023228
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研究機関 | 国立歴史民俗博物館 |
研究代表者 |
齋藤 努 国立歴史民俗博物館, 情報資料研究部, 助教授 (50205663)
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研究分担者 |
原田 一敏 東京国立博物館, 工芸課, 法隆寺宝物室長 (20141989)
田邊 靖博 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 助教授 (70163607)
宇田川 武久 国立歴史民俗博物館, 情報資料研究部, 助教授 (70104750)
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キーワード | 鉄炮 / 火縄銃 / 材質 / 介在物 / 金属組織 / 刀剣 / 刀鍛冶 / 鉄炮鍛冶 |
研究概要 |
国友、堺、仙台、長船など主要生産地の鉄炮を対象として、化学組成、金属組織、尾栓ねじ形状の計測を行った。大部分の資料で、炭素濃度がきわめて低く(通常0.1%以下)、介在物としてはリン・カルシウムを主体としチタンをほとんど含まない、日本刀の素材とは異なる鉄が使用されていた。製作技法の巻張、うどん張の識別は、介在物と金属組織から判断可能であることがわかった。分析資料の中に、明らかに介在物中に鉄-チタン酸化物を主要鉱物として含むものが見つかった(TSG-1-05)。この資料は岡山藩で製作され伝世した、荻野流と考えられる無銘の鉄炮である。現在福山城に所蔵されている刀鍛冶銘(備前長船鍛冶作)の荻野流鉄炮と形態が酷似することから、資料TSG-1-05もまた刀鍛冶によって製作されたと推定される。また、仙台藩に伝世していた、同一の刀工(「久保田宗明」銘)による短刀と鉄炮の分析結果では、短刀の介在物にチタンが含まれてはいたものの、短刀も鉄炮も、他の鉄炮資料と同様、鉄・リン・カリウムなどを多く含むケイ酸塩を介在物にもつ軟鉄を素材として使用していた。これらの分析結果から、次のように考えることができる。1)刀鍛冶によって製作された資料TSG-1-05は、江戸中期以降、刀の需要が減り一方で鉄炮の需要が増大したことから、刀鍛冶の中に鉄炮の製作を行なうようになった者が出てきたことの反映である。2)鉄炮鍛冶と刀鍛冶では材料調達および製作技法の面で相違があり、本業以外の製品を作る際にも材料の使い分けはしていなかった可能性がある。鉄炮鍛冶の材料調達については、今後文献の調査を含め、個々の事例についての研究の蓄積が必要であろう。
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