歴史資料の調査研究において、検索の結果得られる資料画像より、目的とする資料を探し出し、関心がある箇所を適切な倍率で閲覧したり、関連資料との比較ができる調査研究支援システムを実現することを目的として、前年度に引き続き、国立歴史民俗博物館で所蔵する錦絵コレクションを評価対象に加えて、以下の研究を進めた。シンポジウムおよび研究会において成果を報告するとともに、国立科学博物館特別展「江戸大博覧会」と国立歴史民俗博物館特別企画「歴史を探るサイエンス」において、研究成果を取り込んだ閲覧システムを公開した。 (a)画像構成法と画像提示方式: 資料画像毎に階層画像データを用意し、検索結果に応じて配列情報だけを生成することにより、画像データを再構成することなく表示を行う画像構成法について、総数231点の小袖資料と2659枚の錦絵を対象に評価を行った。表示しようとする数が200程度であれば、検索結果を得てから表示が完了するまで実用的な時間で実行できる。また、1000×550程の表示領域におよそ200点の資料の画像を一斉に表示しても概略の形状や配色を認めることができる。さらに、1000点の錦絵資料を表示しても、その種類を判別できる。このことから、検索で数を絞らずに画像を表示し、順次拡大して目的とする資料を周囲と比べながら探索する利用に適用できる。不確かな情報をもとに資料を探す際に有効であることが明らかとなった。 (b)比較方式: 配列された複数の画像の中から関連する資料の相互の比較と対応した表示を実現するため、2つの表示領域で位置・倍率が独立した表示と、任意の位置・倍率で連結して表示するモードを実現した。また、大きさの異なる画像データの比較表示を実現し、異なる条件で集めて点数が違う資料群の比較を可能とした。このような比較機能により、資料相互の比較だけでなく、一つの資料の中での離れた箇所の細かな比較を資料相互の比較と全く同一の操作でできるなど、調査研究の自由度が高まることを実証した。
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