研究概要 |
東京国立博物館内における作業として、博物館が所蔵する江戸初期および江戸末・明治初期の絵画作品や器物など10点について、X線透過撮影、エミシオグラフィー、光学顕微鏡観察、各種光学写真撮影などの方法による科学的検査を実施した。特にキリシタン遺物に関する検査においては、著しく劣化の進行した銅板作品について、各種の光学的手法で撮影した画像解析から、内容を読み取れる可能性が生まれてきた。現在これらの画像の分析を実施している。 また明治初期油彩画においては、絵具の微量サンプルを用いてマイクロアナライザー付走査型電子顕微鏡観察による顔料分析を実施した。現在はこの分析結果を元にして、技術黎明期における関連作品との比較検討を行い、材料と製作技術の解明を進めている。キリシタン絵画あるいは幕末・明治初期の絵画技術が、西欧絵画に対していかなる関係であったのかを材料と技術の側面から明らかにしつつある。さらに江戸時代の絵画に関して、西欧的技術および材料における移転の有無やその程度について比較検討を始めた。 検査で得られた画像や数値は、デジタル化による蓄積とともにデータベースの構築を行い、分析や比較検討をする際、有効に作用するよう効率化を図っている。 そのほか館外における活動として、イタリア(ヴァティカン博物館,ローマ国立博物館,カピトリーニ博物館,クリプタ・バルビ)およびポルトガル(ベレン文化センター,シアード美術館,国立考古学博物館)において、メダイなどキリシタン遺物の調査を行った。 研究成果の公表については、文化財保存修復学会におけるポスター発表、東京国立博物館および国立歴史民俗博物館刊行の学術雑誌における論文発表を行った。
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