研究課題
本年度は、前年度までの、のぞきからくりの所在確認と現存遺構の確認調査を踏まえて、さらに現存遺構の確認調査と、文献資料の調査をおこなった。三原市郷土資料館に所蔵されるのぞきからくり現存遺構は、同館に常設展示されているものであるが、からくりの機構と、遠近法にもとづく種絵を完備し、さらにのぞき節の音声記録までを併せて保存している希有な例であることを確認した。さらに大阪歴史博物館の協力を得て、同館がのぞきからくりを復元した際の参考資料を検討する機会を得、これを踏まえて、奄美大島に現存する遺構の調査を実施した。また、既存からくり関係展示施設である高山屋台会館および高山祭ミュージアムにおいての調査も実施した。文献資料については、歌舞伎台帳の舞台書等の調査により、遠近法を利用した書割に関する検証をすすめ、透視図法と遠近法を利用した視覚表現との関連性について考察をおこなった。これらについては小考をおもに口頭発表の形で発表した。さらに文献調査として、のぞきからくりの芸態資料を歌舞伎台帳「義臣伝読切講釈」(京都大学附属図書館蔵本)の中に見いだすを得た。この芸能資料は、従来ののぞきからくり研究に活用されたことがなく、今後さらに豊富な材料を提供しうるものと考える。以上のように、視覚表現と芸態の両面にわたる文献調査を行ったが、こうした作業は図らずも風俗資料としての歌舞伎台帳の卓越性をも確認することとなったことをも付言する。
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