転写因子インターフェロン制御因子(IRF)-2を欠損するマウスはナチュラルキラー(NK)細胞の不全を示す。即ち、同マウスでは脾臓中のNK細胞数が1/5〜1/10に減少し、しかも残存するNK細胞においては、野生型マウスで見られるNK1.1+Ly-6C+のサブセットがほとんど見られない。従って、IRF-2はNK細胞の増殖・分化・成熟に重要な機能を果たしていると考えられる。方、これまでに知られているIRF-2の機能にはI型インターフェロン(IFN-α/β)シグナルの抑制があるが、IFN-α/β受容体を欠くIRF-2欠損マウスにおいては、過剰なIFN-α/βシグナルは消失するもののNK細胞数は回復しない。また、IFN-γ受容体を欠損させてIFN-γシグナルをシャットオフしてもNK細胞数は減少したままであり、従ってIFN-α/β/γはこの表現型に無関係である。さらにIL-15存在下で骨髄細胞を培養したところ、得られたNK細胞数が野生型マウスに比較して減少していた。実際、IRF-2欠損はIL-15の発現が上昇していることが知られているため、NK細胞の分化に必須なIL-15の産生異常はIRF-2欠損マウスにおけるNK細胞不全を説明しない。以上の結果から、NK細胞に関するIRF-2の機能は、IFN-α/βシグナルの負の制御とは異なるこれまでに知られていないものであり、またNK細胞中で作動するものであって、やはりNK細胞の分化に必須であるがNK細胞中ではなく、骨髄微小環境内で作動し、IL-15の発現を制御することによって機能する別の転写因子IRF-1のそれとも異なるものである。
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