研究課題
特定領域研究
本研究においては、刷り込み遺伝子の発現異常と発がんとの関連の全体像を明らかにするため、1)新規刷り込み遺伝子を単離 2)刷り込み遺伝子の機能解析 3)がんにおける刷り込み遺伝子の発現異常を網羅的に解析した。1)ヒト正常細胞において142ヶ所のdifferential methylated region(DMR)候補領域が明らかにした。さらに、親起源の明らかなヒト染色体を保持するマウス雑種細胞株を利用して、19番染色体上のDMR候補領域から2つの新規刷り込み遺伝子を同定した。この染色体上には、脳腫瘍の発生に関与する刷り込み遺伝子の存在が示唆されている。グリオーマ細胞株における発現解析の結果、高頻度な新規刷り込み遺伝子の発現異常が認められ、グリオーマの発生・進展に関与する可能性が示唆された。2)noncoding RNA LIT1刷り込み遺伝子の発現制御機構を理解するために、可視化させてRNA分子の動的挙動を観察する解析アプローチとしてRNA FISHを試みた。その結果、LIT1 RNAは細胞周期を通して安定にLIT1 DNA周辺領域に局在し、刷り込み領域における発現制御機構の中でRNA分子の関与によるクロマチン構造の変化が重要な働きをしている可能性が示唆された。3)刷り込み異常ががんの進展に関与することが示唆される中、多検体の刷り込み状態を迅速かつ簡便に解析する方法として定量PCRによる刷り込み遺伝子PEG1/MESTの発現解析法を確立し、肺腺がん、胃がん、大腸がんとの関連性を検討した。その結果、がん部において高頻度の両アレル性発現を示し、PEG1/MESTががんの進展に関与していることが示唆された。また、大腸がんにおいては、高頻度にLIT1のLOIも認められた。さらに、LIT1-DMRのメチル化状態、ヒストンテール修飾とCDKN1Cの発現とに相関が観察され、がんの発生進展に重要な役割を担っている可能性が示唆された。このように、刷り込み遺伝子がかかわるエピジェネティクスな遺伝子発現制御の解明は、発がんの分子機構の理解およびがん診断・治療面などの幅広い領域への発展に貢献できるものと考えられる。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (12件)
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