研究概要 |
われわれは新規ヒトがん・精巣(CT)抗原の一つであるOY-TES-1を同定した。これは精子アクロソーム内プロアクロシン結合タンパクsp32前駆体のヒトホモログ遺伝子である。OY-TES-1の知見をもとに、既知のいくつかの精子タンパク遺伝子についてRT-PCR法、リアルタイムRT-PCR法で正常組織での発現を、また、RT-PCR法でがん組織での発現を検討した。これらの中でAKAP110/AKAP3、NYD-sp10/RFX4、acrosinなど、がんにも発現するものがあった。特にAKAP110/AKAP3は肺癌で2/11(18%)、腎癌で4/10(40%)、卵巣癌で15/54(8%)、アストロサイトーマで12/46(26%)に発現していた。また、NYD-sp10/RFX4はアストロサイトーマで高頻度に発現していた(13/40,33%)。卵巣癌でのAKAP110/AKAP3の発現と粗織分化度、及び臨床病期との間にはよい相関がみられた。低分化型の卵巣癌では、むしろAKAP110/AKAP3 mRNAが発現している症例の方が発現していない症例に比し、overall surbibal、progression-free survival共に有意に高いことが示された。すなわちAKAP110/AKAP3 mRNAの発現は卵巣癌では良好な予後因子であることが示唆された。現在AKAP110/AKAP3組み換えタンパクを作製し、血清学的な解析を行っている。RFX4は転写因子RFXファミリーの一つとし2種類のスプライスパリアントがデータベースに登録されている。アストロサイトーマについて詳細に解析た結果、新たに3種類のスプライスバリアントを同定した(RFX4C、RFX4D、RFX4E)。RFX4Dはアストサイトーマの他、正常脳組織にも弱いながらも発現がみられ、いわゆるcancer/testis/brain(CTB)抗原と考えれた。RFX4-Eは他のバリアントに比し、3'端が大幅に欠損し、RFX4遺伝子に特徴的ないくつかのドメインを有していない。RFX4Eは正常脳には発現せず、アストロサイトーマにのみ発現していた。しかも発現陽性の13例のうち12例がGII及びGIIIであり、RFX4-Eの発現は悪性度に相関していた。さらに、SEREX法でTSGA10(NYD-SP7)を、バイオインフォーマティクスでGAPDH2をそれぞれ見いだした。
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