1.転写伸長因子エロンガンAの遺伝子欠失ES細胞とマウスの作製 VHL癌抑制蛋白と相互作用することが知られている転写伸長因子エロンガン複合体の触媒サブユニットであるエロンガンAの遺伝子を破壊したES細胞を作製した。エロンガンAのヘテロ欠失ES細胞は野生型ES細胞と同様の性状を示したが、ホモ欠失細胞では、細胞増殖速度が約1/3に低下し、細胞サイズの増大、多倍数体細胞の増加を認めた。解析の結果、これらの表現型はdelayed mitosisに基づくものであることが判明した。また、野生型とホモ欠失ES細胞とを用いてDNAマイクロアレイを実施したところ、両者の間で一群(5%以下)の遺伝子の発現量にのみ有意な差が認められ、エロンガンAがこれまで考えられてきたようなgeneral factorではなく、特定の遺伝子の発現をのみ制御している可能性が示唆された。また、作製したヘテロ欠失マウスはこれまでのところ表現型に明らかな異常を認めず、現在ホモ欠失マウスを作製しているところである。 2.新規転写伸長因子エロンガンA3の単離と機能解析 転写伸長因子エロンガンAのファミリーに属する新規の分子エロンガンA3のcDNAを単離した。エロンガンA3は、エロンガンA、A2と同様にそれ単独で軽度の転写活性を有するが、Aとは異なりエロンガンBCによる活性化を受けないことが判明した。この事実は、エロンガンA3が細胞内ではAとの間でエロンガンBCとの結合を競合することにより、エロンガンAの負の調節因子として作用する可能性を示唆するものである。
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