DNAワクチンは、ペプチドを用いる方法と異なり、すべてのアミノ酸配列が細胞内で発現しプロセッシングされるため、患者HLAに規定されずに抗原ペプチドとなりうる配列を免疫担当細胞に提示させ得る利点を有している。その抗原性を高める方法として、抗原ペプチドとMHC分子の結合の場である粗面小胞体へのシャペロンとしてcalreticulin (CRT)に注目した。そこで研究代表者らがこれまで研究を行ってきた、悪性黒色腫抗原のひとつであるTRP-2とCRTの融合蛋白を発現し得るプラスミドを作製し、in vivoにおける免疫原性に与える影響についてTRP-2 DNAとCRT/TRP-2 DNAワクチンで比較検討しすることを目的として、初年度においては、まずCRT DNAワクチンとTRP-2 DNAワクチンを作製し、C57BL/6マウスに免疫した。その結果、非ワクチン投与マウスおよびpcDNA3コントロールワクチンで免疫したマウス血清中には、CRT、TRP-2のいずれに対する抗体も誘導されていなかった。また、pcDNA CRTワクチンで免疫したマウス血清中に、抗CRT抗体を測定することはできなかった。しかし、pcDNA3 TRP-2ワクチンを投与されたマウス血清中には、1600倍から3200倍希釈陽性のIgG抗体が誘導されていた。次に、pcDNA3 TRP-2ワクチンによって誘導される免疫応答が、腫瘍拒絶効果を発揮するかについて検討した。TRP-2 DNAワクチンで免疫した後、マウス悪性黒色腫細胞の皮下腫瘍を作製したところ、その腫瘍増殖はコントロールDNAワクチンで免疫した群に比べ、有意に抑制されていた。すなわち、TRP-2が腫瘍拒絶抗原としてDNAワクチンでも有望な抗原であることが確認された。現在CRT/TRP-2融合蛋白を発現できるDNAワクチンを作製中で、より強い抗腫瘍活性を誘導できることを明らかにしていく予定である。
|