AML1/RUNX1遺伝子は造血初期発生制御において中心的役割を担う転写因子をコードし、同時に、ヒト急性白血病におけるもっとも高頻度の遺伝子変異の標的のひとつでもあることが知られている。当該研究では、染色体転座による古典的AML1融合遺伝子形成ではなく、最近明らかにされたAML1/RUNX1のゲノム遺伝子変異による白血病・骨髄異形成症候群の発症過程の分子メカニズムを明らかにすることを、その目標としている。本年度は以下の諸点を明らかにした。 1.白血病骨髄異形成症候群の自験170症例について、DNA結合ドメインに相当するエクソン3から6におけるAML1遺伝子座のゲノムDNA変異をSSCP法によって検討し、うち5例(2.9%)に変異を認めた。 2.うち2例はN末端近くでのフレームシフトであり、単純な機能喪失型変異と考えられた。また、1例はサイレント変異であり、アミノ酸配列に変化を生じないものであった。 3.一方、2例にDNA結合ドメインのC末端近傍の挿入型変異(それぞれI150insおよびK168ins)を見い出した。 4.これらのAML1変異体はAML1欠損ES細胞の造血障害をレスキューすることができず、微細な変異ではあるものの、生物活性に関しては機能喪失しているものと考えられた。 5.また、I150insまたはK168insを胚細胞系列に導入した遺伝子改変マウスの作成に成功した。現在、これらのマウスを用いて骨髄異形成症候群・白血病発症に挿入型AML1遺伝子変異がどのように関わっているのか検討をすすめている。
|