研究概要 |
ABL関連白血病遺伝子であるTEL-ABLならびにp185BCR-ABL遺伝子をテトラサイクリン反応性プロモーターの下流につないだコンストラクトを作成した。このコンストラクトでは、遺伝子の下流に、internal ribosomal entrysite (IRES)でつないだEnhanced GFPの遺伝子が挿入済みなので、GFP遺伝子の発現を調べることで、容易に導入細胞を識別できる。そこでこれらの遺伝子のコンストラクトを、申請者がすでに樹立した親株ES細胞に導入し、G418で選別し、TEL-ABL, p185BCR-ABLの発現が厳格にコントロールされるES細胞を樹立した。次に、2つ遺伝子の発現による影響がES細胞に与える影響をテトラサイクリンの存在下、非存在下で検討した。その結果、p185BCR-ABLではES細胞のコロニー形態がroundingし、著しい変化を示すのに対して、TEL-ABLを発現させた細胞では、ほとんど変化が見られなかった。次に、血液細胞に対する効果を解析するために、ES細胞をin vitroでOP9ストロマ細胞と共培養することで、強制的に血液細胞へと分化させた後、これらの遺伝子の発現を誘導した。p185BCR-ABLを発現させるとp210BCR-ABLと同様に未熟血液細胞の増加が見られたが、TEL-ABLではその効果は非常に弱いものであった。細胞表面マーカーの解析では未熟血液細胞のマーカーであるc-kit陽性、細胞系列マーカー(TER119, CD11b, B220)陰性細胞の割合の増加が、ともに遺伝子を発現した血液細胞で観察された。以上の結果はTEL-ABL, p185BCR-ABLが同一細胞に与える効果が、異なることを示唆している。今後は、細胞分化に与える影響を血液コロニー法を用いて解析する予定である。また、免疫不全マウスへの移植についてもシステム確立のための基礎実験を開始している。
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