Skiは、ニワトリのレトロウイルスが持つ癌遺伝子として発見され、それと相同性を持つ遺伝子としてsno (ski-related novel gene)が同定された。私共の研究室ではSki/Snoが癌抑制遺伝子産物MadやRbによる転写抑制に必須なコリプレッサーであることを明かにし、ski/snoが癌抑制遺伝子としても機能する可能性が示唆された。私はノックアウトマウスを用いて実験を行い、細胞のタイプによってはski/snoは癌抑制遺伝子としても機能することを明らかにしてきた。Sno^<+/->およびski^<+/->マウスを用いた発がん実験では、リンパ腫の発生が最も多かったので、本研究では造血系細胞の分化と増殖におけるSki/Snoの役割を明らかにすることを目的とした。 ski^<-/->マウス新生児の胸腺細胞数は野生型よりやや少ないだけで、調べた限りT細胞の分化に異常は見られず、IFN-γやIL-4の発現も差がなかったが、TCR刺激に対する増殖反応が著しく低下していた。そして、脾細胞数は野生型の1.4%にまで低下していた。RAG2^<-/->マウスにski^<-/->胎児肝細胞を移植し、成体でのTリンパ球の分化を解析したところ、一旦は野生型と同様に脾臓やリンパ節にCD4^+細胞やCD8^+細胞が出現するものの、5週を過ぎると胸腺のCD4^+CD8^+細胞が消失し、胸腺と脾臓、リンパ節のCD4^+細胞およびCD8^+細胞が減少した。これらの事から、Skiは成体におけるT細胞分化に重要な役割を果たしていると考えられた。
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