研究課題/領域番号 |
14030005
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
堀 勝義 東北大学, 加齢医学研究所, 助教授 (00143032)
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研究分担者 |
秋田 博敏 東北大学, 大学院・歯学研究科, 助手 (10108540)
窪田 和雄 東北大学, 加齢医学研究所, 助教授 (40161674)
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キーワード | 腫瘍血流遮断 / 腫瘍血管 / 固形腫瘍 / 難治癌 / コンブレタスタチンA-4 / AC7700 / 癌治療 / 微小循環 |
研究概要 |
コンブレタスタチンA-4(African bush willowからの抽出物)の誘導体AC7700には強力な腫瘍血流遮断作用と抗腫瘍効果があることを報告してきた。この作用は癌細胞の個性、増殖部位に依存しないため、抗癌剤に抵抗性の癌を含む難治癌にも効果が期待できる。我々の基礎研究をもとに、2002年初頭より、AC7700は新コードネームAVE8062として、欧米で臨床試験に入った。そこで、今年度はAC7700の腫瘍血流遮断作用についての微小循環学的機序解明と、治療効果の評価法の研究を重点的に行い、以下の新知見を得た。(1)微量のAC7700を腫瘍血管と正常血管に局所滴下して用量-血流反応解析を行った結果、AC7700に対する感度は、正常血管の方が腫瘍血管よりも50倍以上も高かった。(2)AC7700の動注は腫瘍血流遮断効果を増強しなかった。(3)AC7700は比較的太い宿主細動脈の血管抵抗を高めることにより、下流に位置する腫瘍血流支配血管の潅流圧を低下させた。(4)腫瘍血流遮断が不可逆的となるのは、血流停止後ドレナージに停留した赤血球が溶血し、栓塞が生じることが主要因であった。(5)腫瘍血流遮断剤による治療では、死滅した腫瘍組織を吸収するための経路が断たれるため、生存が延長するほどの強い抗腫瘍効果がみられた時でも、腫瘍サイズは長期間不変であった。以上の結果より、AC7700による腫瘍血流遮断は、この薬剤の腫瘍血管への直接作用によってではなく、細動脈を介した間接作用によって起こると結論した。また、腫瘍血流遮断剤による治療効果の評価には、腫瘍縮小効果を重視した従来の効果判定基準のみで判断するのは適切ではなく、腫瘍内のヘモダイナミックスや、腫瘍マーカーの変化にこれまで以上の注意を傾けなければならないことが強く示唆された。今後、オートラジオグラフィと免疫組織化学の解析を加え、腫瘍血流遮断メカニズムの完全解明と、ドレナージに停留した赤血球が溶血する理由の解明を行わなければならない。
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