本研究は、ホルモン依存性がんの発がん、増殖の分子機構の解明とその診断・治療への臨床応用をめざし、1)ホルモン依存性がんにおける性ホルモンの下流に存在する標的因子群の性状を分子レベルで解明し、2)遺伝子改変動物とがんへの遺伝子導入を用いてin vivoでの解析によりそのがんにおける役割を明らかにし、3)それらを分子標的として遺伝子治療、分子標的薬、早期診断への応用を計ることを目的とする。本年度は、性ホルモン標的因子を申請者が考案したgenomic binding-site cloning (GBS)法とDNAチップを応用し複数同定した。それら性ホルモン標的遺伝子の機能解析として、特にRINGフィンガーをもつEfpに注目した。乳がんにおけるEfpの機能を検討するために乳がん細胞株MCF7を用いてin vivoでの検討を行った。我々は乳がん細胞株をヌードマウスに埋め込み皮下に腫瘍形成が誘導される時に、同時にEfpのアンチセンスオリゴを注射することで腫瘍形成が抑制されることを示した。さらに我々はEfpを過剰発現したMCF7乳がん細胞株を作成した。このEfp過剰発現MCF7は卵巣摘出したエストロゲンの乏しいヌードマウスでも腫瘍形成を誘導した。このことはEfpを過剰発現した乳がんではホルモン依存性が消失していることを示唆させる。以上よりEfpは乳がん細胞の増殖におけるKey regulatorであることが示された。次にその分子機能としてEfpは細胞周期進行を抑制するブレーキ役の14-3-3σのタンパク分解を促すユビキチンリガーゼの働きをすることを示した。今回の発見は細胞周期の制御ならびに性ホルモン依存性がんに新たなメカニズムを提唱した。
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