同所性移植による肺癌細胞のリンパ節転移の分子機序ならびにMMP阻害剤による転移抑制効果の解析を行った。樹立したリンパ管内皮細胞株は特有マーカーであるFlt-4を発現しているが、マウス肝類洞壁内皮細胞株(HSE)ではFlt-4の発現は認められなかった。リンパ管内皮細胞によるリンパ管新生(管腔形成能及び基底膜への浸潤能)をMMP阻害剤が有意に抑制することを明らかにした。新規MMP阻害剤(MMI-270やTN-6b)の投与により、同所性移植した肺癌細胞のリンパ節への転移を有意に抑制した。その抑制効果はその不活性型光学異性体では抑制効果が観察されなかった。従って、肺癌の縦隔リンパ節転移の抑制にMMPの阻害が関与していることが示唆された。 アシアロGM抗体の前投与によりNK細胞を除去したヌードマウスにヒト肺癌細胞SBC-5を尾静脈投与した後、転移能を観察した。その結果、下肢部への骨転移が高頻度に観察された。骨転移関連因子として知られているParathyroid Hormone-Related Protein (PTH-rP)の産生能を、その細胞培養上清をRIA法にて測定した結果、SBC-5は他の細胞と比べ、500倍以上もの産生能力を有することが明らかとなった。また、骨髄細胞とこれら癌細胞との共培養を行い、TRAP assayを行った結果、SBC-5が有意に破骨細胞を分化誘導することを見出した。現在、in vivoセレクション法により、骨好転移性のヒト肺癌細胞株の樹立を行っている。
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