研究概要 |
α1,4-N-アセチルグルコサミン転移酵素(α4GnT)は主として胃・十二指腸粘膜や胃幽門腺化生を示した膵導管上皮から分泌される粘液に特徴的な糖鎖,GlcNAcα1→4Galβ残基を生成する糖転移酵素で,この酵素は胃癌細胞や膵・胆道癌細胞でも高頻度に発現している.α4GnTは末梢血有核細胞では殆ど検出されないことから,末梢血に流入した微量な膵癌細胞を検出する目的で膵癌患者33名,慢性膵炎患者10名,健常人70名を対象に定量RT-PCR法を用いて末梢血有核細胞画分におけるα4GnT mRNAの発現量を解析した.α4GnT cDNAのコピー数/GAPDH cDNAのコピー数を10^7倍した値をα4GnTの発現量とし,膵癌患者群と健常人群で得られたα4GnTの発現に対してROC曲線を作製することで両群間を判別するカット・オフ値,12を得た.従って,α4GnT発現量の基準値を"12以下"と定義することで各群を解析した.α4GnTは膵癌患者の81.1%に陽性であり,その発現量は44.48±8.35(平均±標準誤差)であった.膵内における癌の占拠部位別の検討では,膵頭部,体尾部のいずれにおいてもα4GnTは高頻度に陽性となった.さらに,α4GnTの発現量は癌病期の進行と伴に増加する傾向にあった.一方,α4GnTは慢性膵炎患者群の40.0%,健常人群の14.2%でも陽性となったが,α4GnTの発現量はそれぞれ17.87±6.98,7.15±0.91であり,慢性膵炎患者群,健常人群のいずれにおいてもα4GnTの発現量は膵癌患者群に比べて有意に低値であった.以上より,α4GnT遺伝子を対象とした本アッセイ法は膵癌のスクリーニングに有用と考えられた.
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