ドラッグデリバリーシステムを用いて、全身投与したアジュバントを腫瘍巣に選択的に送達し、そこで自然免疫反応を惹起することが、有効な抗腫瘍免疫反応の誘導を促すかどうかを検討した。大腸癌細胞株CT26を皮内接種し径1cmになったマウスに、lipid Aの誘導体であるONO-4007を封入したPEG-リポソームを静注すると、腫瘍巣で選択的に炎症反応が惹起され、リポソームの3回投与によりマウスの生存期間が延長した。一方、PEG-リポソームに封入せずにONO-4007を3回静注した場合も同程度の効果がみられ、PEG-リポソームへの封入の有無による差異を見いだすことが現時点ではできていない。CT26にモデル抗原としてβ-ガラクトシダーゼ(β-gal)遺伝子を導入したCT26.CL25をマウスに皮内接種する前に、β-galを完全フロイントアジュバントと混合して皮下投与する予防モデルでは、腫瘍の増大は抑制されたが、腫瘍径が1cmになってからβ-galを投与する治療モデルでは、腫瘍の増大を抑制することはできなかった。以上の結果は、腫瘍特異的T細胞を誘導することに比べ腫瘍巣で自然免疫反応を誘導することの方が、より有効な抗腫瘍免疫反応を誘導しうることを示唆している。今後は、ONO-4007封入リポソームまたはONO-4007単独の1回投与の効果を比較することにより、アジュバントのリポソームへの封入が、より持続的で強力な抗腫瘍効果を誘導するかどうかを検討する。
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