ヒトテロメアの伸長阻害活性を調べる方法として、TRE(Telomeric Repeat Elongation)アッセイが知られているが、PCRによるプライマーダイマーなどのartifactによる影響が大きく、正しく評価できない場合が有る。さらに、Non-RIの手法が望まれることから、今回、岩手医科大学前沢助教授が開発された表面プラズモン共鳴法(SPR)を用いる手法を使い、ナフチリジンダイマーのTRE阻害活性を評価した。方法は、ヒトテロメア繰り返し配列を持つ適度な長さのDNAオリゴマーをSPRセンサー表面に固定化した。HeLa細胞から抽出したテロメラーゼをSPRのバッファーに加え、dNTPsと共に流すと、テロメラーゼによりセンサー表面上のオリゴマーが伸長される。伸長された長さは、SPR強度として観測することが出来、伸長前と伸長後のSPR強度の増分として数値化される。この条件でナフチリジンダイマーをテロメラーゼと一緒に流し、テロメア伸長に対するナフチリジンダイマーの及ぼす影響をSPR強度の増分として比較した。その結果、テロメラーゼ抽出物(0.1mg/mL)に対してナフチリジンダイマーを加えなかった場合、SPR強度は115RU(Response Unit)観測されたのに対して、1uMのナフチリジンダイマーを共存させると22RUに減少した。このことから、ナフチリジンダイマーがテロメラーゼによるヒトテロメア伸長を阻害することが明らかとなった。得られたセンサーグラムから、ナフチリジンダイマーがヒトテロメア配列に強く結合していることが再確認された。従って、我々が提案したようにナフチリジンダイマーによりテロメア配列で形成される「テロメアノット」が、テロメラーゼによるテロメア伸長を阻害していることがここに明らかとなった。
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