研究課題
特定領域研究
本研究では、ショウジョウバエの突然変異の大規模スクリーニングにより、非対称分裂の働く因子を系統的に同定し、その知見をもとに、幹細胞の分裂、卵割、上皮細胞を制御する細胞極性を総合的に理解することを目的とする。ショウジョウバエの神経幹細胞は、それ自身とより小さい姉妹細胞に非対称に分裂する。その際、神経の運命決定因子である転写因子ProsperoやNotchシグナルの制御因子Numbを姉妹細胞である神経前駆細胞に不等分配する。Prosperoを直接結合し、その非対称な細胞内分布と不等分配を規定するアダプター分子Mirandaの細胞内局在を指標として、神経幹細胞の非対称性に異常をきたす突然変異を系統的にスクリーニングした。その結果、X染色体と第2染色体に関して計10遺伝子座のMiranda局在異常変異を分離することができた。このなかで、本研究で新たに分離された変異は、1)運命決定因子の不等分配は正常だが、娘細胞のサイズが等しくなる変異(4系統、2遺伝子座)。2)神経幹細胞は正常な極性を保ち、分裂軸の方位がその極性と一致しない変異体(5系統3遺伝子座)3)神経幹細胞は正常な非対称分裂を行うが、その方向がランダムになる変異(1系統)4)運命決定因子の細胞内非対称局在に異常をきたす突然変異(2系統2遺伝子座)。の4種である。(1)の変異体の原因遺伝子は3量体Gタンパクのβおよびγサブユニットをコードする遺伝子であることが判明し、細胞のサイズの非対称性には3量体Gタンパクシグナルがかかわることが明らかになった。また、(2)の遺伝子座のひとつは、成虫の脳の構造に異常をきたす変異の原因遺伝子mushroom body defect(mud)であることが判明し、分裂軸と細胞極性のカップリングに働くしくみの一端が明らかになった。
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