カルパインは細胞質内にあって、細胞内情報伝達系や細胞周期に関与する蛋白質と直接相互作用し、これらを限定的に切断することにより、その機能・構造・活性を調節するモジュレータープロテアーゼである。近年、特に細胞周期とカルパインの関係について、興味深い報告が相次いでいる。まず、p35 CDK5 activatorをカルパインがp25にプロセスすることが報告され、アルツハイマー病などとの関係も含めて大きな注目を集めている。また、p27 CDK inhibitorのturnoverもカルパインに制御されるという報告がなされた。我々の見出した組織特異的カルパインnCL-4が胃癌細胞でダウンレギュレーションされており、逆にnCL-4の発現を抑えるとNIH3T3細胞が形質転換することも報告された。我々は共同研究により、独自にCCAAT/enhancer binding protein (C/EBPβ)及びcyclin Aがカルパイン様プロテアーゼによって切断を受けることで活性を制御されていることを見出した。このプロテアーゼを詳細に解析した結果、骨格筋特異的に発現すると考えられていたカルパイン、p94(カルパイン3)のsplicing variantであることを強く示唆する結果を得た。そこでこの分子の同定を試みた結果、p94遺伝子上に第三のプロモーター及び第一エキソンが存在し、このドライブによって発現しているp94のalternative promoter/splicing productが存在することを発見した。今後は、本カルパインホモログの生化学的性質やin vivoでの基質などを解析していきたい。
|