カスパーゼ8はデス受容体によるアポトーシス誘導だけでなく、免疫システムにおけるリンパ球の活性化に必須である。FLIP(L)はカスパーゼ8と高い相同性を有するタンパク質であり、カスパーゼ8とヘテロダイマーを形成後、カスパーゼ8によってN末端フラグメントFLIP(p43)とC末端フラグメントFLIP(p12)に切断される。FLIP(L)の過剰発現は転写因子NF-κBのシグナル伝達経路を活性化し、その活性化はカスパーゼ阻害剤zVAD-fmkによって阻害された。また、FLIP(p12)はNF-κBの活性化を誘導せず、FLIP(p43)によってのみNF-κBの活性化が誘導され、その活性化はzVAD-fmkに非感受性であった。したがって、カスパーゼ8によるFLIP(L)のFLIP(p43)への切断がNF-κBの活性化に必要であることが示唆された。カスパーゼ8欠損細胞にFLIP(p43)を過剰発現させたところ、NF-κBの活性化がほとんど誘導されなかった。しかしながら、カスパーゼ8あるいはカスパーゼ8(p43)を共発現させたところ、FLIP(p43)によるNF-κBの活性化が回復し、この活性化はzVAD-fmk存在下でも誘導された。不活性型カスパーゼ8を共発現させた場合もFLIP(p43)によるNF-κBの活性化が観察されたことから、カスパーゼ8のプロテアーゼ活性以外の生理機能がFLIP(p43)によるNF-κBの活性化に重要であることが示唆された。TRAFファミリーはNF-κBの活性化に重要なアダプタータンパク質であり、ドミナントネガティブ型TRAF2はFLIP(p43)によるNF-κBの活性化を顕著に阻害した。また、内在性TRAF2はFLIP(p43)と特異的に結合し、FLIP(p43)/カスパーゼ8/TRAF2の複合体がNF-κBの活性化に必要であることを見出した。これらの結果から、カスパーゼ8によって特異的に切断されたFLIP(p43)がTRAF2と特異的に相互作用し、NF-κBのシグナル伝達経路を活性化することが明らかとなった。
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