平成14年度は、2種類の異なる主要組織適合抗原遺伝子複合体(MHC)をバックグラウンドに持つAND TCR(T-cell receptor)トランスジェニックマウスを用いて実験を行った。AND TCRトランスジェニックマウスはpigeon cytochrome cを認識するTCRをすべてのTリンパ球が発現しているマウスで、H-2bのバックグラウンドではCD4陽性Tリンパ球が分化するが、H-2qのバックグランドでは成熟Tリンパ球は分化することができない。我々はAND TCRトランスジェニックマウスにpositive selectionを誘導するペプチドと、negative selectionを誘導するペプチドをすでに解明している。そこでその両ペプチドで磁気ビーズを用いて分離されたH-2q AND TCRトランスジェニックマウス由来のナイーブな未熟Tリンパ球を刺激し、リン酸化の程度に差がある分子を二次元電気泳動法・質量分析法を駆使して同定を試みた。現在までに、いくつかの候補遺伝子が見出されており、それらの遺伝子について全長遺伝子を部分アミノ酸配列を元にクローニング中である。機能解析の方法としては、レトロウイルスベクターにそれぞれの遺伝子のRNAi用のDNAを組み込む。そのベクターをAND TCRトランスジェニックマウスのTリンパ球に導入し、RNAiにより機能的な遺伝子発現を抑制する。その手法を用いることにより候補遺伝子機能の解析を試みている。
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