研究概要 |
転写制御因子p63およびp73の下流分子を同定するために2つのアプローチを試みた. 1.cDNAマイクロアレイを用いた発現解析 p53とそのファミリーp63,p73をヒト癌由来細胞株に強発現させた際に発現が変化する遺伝子をcDNAマイクロアレイにより網羅的に解析した.その結果,最初のp63特異的標的遺伝子としてNotch受容体のリガンドをコードするJagged1およびJagged2を同定した.これらの遺伝子の発現調節領域中に同定したp63あるいはp73に特異的な応答配列はp53結合モチーフの4コピーから構成され,数塩基のスペイサー配列によって区切られていた.スペイサーを欠失させるとp63による転写活化能は保持できなくなり,また,この応答配列は種を越えてマウス,ラットでも保存されていた.さらに,Notch1が高レベルに発現していると,Jurkat細胞とp63発現させたSoas2細胞とを共培養すると,Jurkat細胞でNotchシグナルの標的HES-1の発現増加が見られた.この結果はp63とNotchシグナルの関連を初めて明らかにし,正常の発生,分化においてp63が関わる分子機構の1つを示唆している。 2.p63蛋白に特的に応答するDNA配列のDNAデータベース上からの検索 我々と他のグループの解析結果より,スペイサーが介在するp53結合モチーフの3コピー以上で構成される配列が,p63あるいはp73の高親和性応答配列として働くと推測された.次に我々が独自に開発した多段階検索アルゴリズムを利用した発現制御ユニット解析ツールを用いて,この特異的応答配列に類似した配列をヒトゲノムDNAデータベースから検索したその結果,p63あるいはp73に特異的な応答配列1137ヶ所をヒトゲノム上にマッピングした.現在近傍の候補遺伝子の同定と機能解析を行っている.
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