研究概要 |
栄養源からのシグナル伝達機構におけるPho85キナーゼの標的の探索と同定 Diauxic shiftに伴う遺伝子発現の変化に対するpho85変異の影響をジーンチップを用いて調べた。Diauxic shiftに伴い、糖代謝系のシフト、ミトコンドリア機能の昂進、蛋白質合成の低下が起こることが知られているが、pho85欠失株ではこのような変化に伴う遺伝子発現の変動が正しいタイミングで起こらないことがわかった。今年度は、さらにpho85欠失株ではミトコンドリアの機能に関連する遺伝子の多くが正常に誘導されない、あるいは発現を維持できないこと、シャペロン遺伝子、特にTCP-ring複合体やPrefoldin複合体のサブユニットをコードする遺伝子が発現を維持できないことがわかった。これらの複合体は微小管やアクチン細胞骨格の形成に重要な役割を果たしていることが知られており、Pho85キナーゼがアクチン細胞骨格制御に関係している事実とあわせ興味深い知見である。 転写因子をコードするSMP1,転写抑制因子をコードするNRG1,NRG2はpho85欠失株中で構成的に発現量低下を示した。これらはRim101によって転写を抑制されるが、やはりpho85欠失株中で構成的に発現量が低下したCLN2の上流域にもRim101の結合配列が見いだされた。そこで、Pho85がRim101リプレッサーに拮抗するかどうか調べたところ、NRG1とCLN2のpho85欠失株中、での発現低下はrim101欠失変異の導入により解除され、CLN2上流域のRim101結合配列を除去した変異型CLN2プロモーターの活性はpho85欠失株中でも低下しなかった。これらの結果は、Pho85がCLN2のRim101による発現抑制の解除に必要であることを示している。
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