われわれは家族性乳癌の原因遺伝子であるBRCA1およびBARD1がRINGヘテロダイマーユビキチンリガーゼであることを報告したが、この酵素活性がBRCA1の主たる機能であるDNA修復および転写の制御にどうかかわっているかは明らかにされていない。ユビキチンリガーゼの機能を知る上で重要な事項として基質の同定とユビキチン鎖の種類の同定があげられるが、このうち本研究でわれわれはBRCA1-BARD1によって生じるユビキチン鎖がLys-6を介したものである可能性が高いことを見いだしている。変異型のユビキチンを用いたin vitroの系ではK6Rが他のLys-Arg変異に比較して有意にポリユビキチン鎖の形成を阻害した。また、Lys残基を1つだけのこし、他の6カ所を全てArgに変異させたユビキチンを用いたin vivoの系ではK6において他の変異に比較して有意にBRCA1の自己ユビキチン化が認められた。現在はマススペクトロメーター(LC/MS/MS)を用いてin vivoで自己ユビキチン化したBRCA1のユビキチン鎖の同定を行つているがpreliminaryなデータとして、やはりLys-6を介したユビキチン鎖であることが示唆されている。これと平行してBRCA1-BARD1によって生成されるユビキチン鎖がin vitroにおいて26Sプロテアソームによって分解されるか否かを解析中である。
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