染色体の不安定性を防ぐために、細胞は様々なチェックポイント制御機構を備えており、紡錘体チェックポイント機構も近年注目を受けている。紡錘体チェックポイントに関与するタンパク質群は間期には細胞質や核膜に存在するが、M期の進行に伴いセントロメアに局在し、分裂中期から後期にかけて染色体から消失する。紡錘体が適正にセントロメアに結合していない染色体では消失しないことから、これらのタンパク質群はチェックポイントのセンサーと考えられる。我々はチェックポイント機構と染色体不安定性の関係を理解するために、新規セントロメアタンパク質ZW10およびそれと相互作用を行うタンパク質群に注目して研究を行っており、ZW10の条件的ノックアウト細胞株を作成して、ZW10がチェックポイントタンパク質であることを示した。さらにZW10と生化学的に相互作用するZW250を同定して遺伝子クローニングとノックアウト株の作成に取り組んだ。本年度の研究ではZW250のノックアウト株を完成させ、その表現型を解析することによって、ZW10とZW250を含む新たなチェックポイント制御機構を明らかにすることを目的とした。ZW250のノックアウト細胞の樹立に成功し、表現型の解析を行ったところ、予想に反して、ZW250をノックアウトした細胞でも紡錘体チェックポイントは正常に機能していた。これは、ZW10は複数の機能を持っており、ZW250との結合はチェックポイント機構とは別の機能発現に重要であると考察できる。現在、紡錘体チェックポイントと関連した異なるタンパク質群の解析を行っており、これまで得られた知見が充分に活かされると確信している。
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