研究課題
シクリッドの大規模なゲノム構造の解析を進める目的で、BACライブラリーの作成をおこなった。シクリッドのBACライブラリーは既にOreochromis niloticusでの報告があるが、この種は食料資源としては有用であるが、進化発生的に見て変化に乏しい種である。今回、ヴィクトリア湖産シクリッドの1種、Haplochromis chirotesの血液よりDNAを回収し、クローニングし、最終的に約15万クローン、平均124kb、10回ゲノムカバーのライブラリーを作成した。ライブラリーは3次元プールとし、3回のPCRでクローンのスクリーニングができるシステムとした。前述のように、ヴィクトリア湖に生息するシクリッド(約200種)はほぼ同一のゲノム構造を有することから、本BACライブラリーは200種分の価値に値するものである。また、種特異的な形態形成に関わる遺伝子発現を解析する目的でDNAチップを用いた種間における発現比較を行った。シクリッドにおいては特に顎部の形態が多様性に富んでいるためこの器官に着目し研究を進めている。昨年度までにcDNA約1500クローンをスポットしたDNAチップを作成したが、今年度は5500クローンをスポットしたチップを作成し、解析に用いた。Haplochromis sp. "Redtail sheller"及びHaplochromis parvidensの発生各段階における顎部由来のmRNAを用いて発現比較を行った。特に種間で発現量の違いが大きく見られた3クローンを抽出した。データベース検索により、これらのクローンはそれぞれマトリックスメタロプロテアーゼ、細胞増殖因子、糖タンパク質に相同性がみとめられた。in situハイブリからも発現量に大きな偏りが認められた。
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