研究概要 |
精子形成の場である精細管の中で、他の種類の幹細胞がどのように挙動するかを調べるために、我々は2つの種類の幹細胞を不妊マウスの精細胞の中に移植した。一つは血液幹細胞、もう一つは神経幹細胞である。我々は全身にLacZを発現するROSA26マウスの骨髄細胞を分離し、c-kitチロシンキナーゼリセプターの欠損により先天不妊になっているWマウスの精細管の中に細胞移植を行った。移植後1-6週間で不妊マウスの精巣をLacZ染色を行いドナー細胞の存在を調べてみたところ、血液細胞は移植後2週間では精細管の中でコロニーを形成するものの、1ヶ月以上の長期になるとコロニーを見つけることができなかった。この結果から、血液系の細胞は一時的に精細管の中で増殖することができるものの、長期にわたって生存不可能であることが分かった。 次に我々は神経幹細胞が精細管の中でどのように挙動するかを検討した。まず、脳組織地震が精細管の中で生存できるか否かを調べるために、全身にGFPを発現するグリーンマウス新生仔の脳をばらばらにし、先天不妊のWマウスの精巣に移植を行った。移植後1-4週間でドナー細胞の存在の有無をUV照射下で調べてみたところ、全例でドナーのGFPの蛍光を発する細胞のコロニーを多数観察することができた。そこで、今度は幹細胞が精細管内で増殖することが可能であるかと調べるために、培養幹細胞の移植を行った。グリーンマウスの胎仔(胎生13.5日目)の脳組織を分離・培養し、まずドナーの細胞としてGFPを発現するneurosphereを得た。約3週間後の培養後、この細胞を先天不妊のWマウスの精巣に移植を行い、移植後1,2,4,6週間で解析してみたところ、ドナーのGFPの蛍光を発する細胞のコロニーを多数観察することができた。血液の場合とは異なり、このコロニーは6週間の長期においても精細管の中に認められた。この結果は神経幹細胞自身が精細管の中で生存・増殖可能であることを示すものである。
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