研究概要 |
生殖隆起を誘導するシグナル因子としてのFgf9 st18において中腎細管にFgf8,Wnt4が発現している。それに隣接した中腎中胚葉にAd4BP/SF-1が発現し始める。さらに、ショウジョウバエと線虫で性分化に関与する転写因子のニワトリ相同遺伝子であるDmrt-1を同定し、その発現を調べた。Fgf9,Dmrt-1ともst18では発現していないが、st21においてFgf9はネフロンのボーマンズ結節に発現し、同時にDmrt-1は発現する領域と隣接した中腎中胚葉に発現し始めた。この部域はAd4BP/SF-1発現領域の腹側の腹部側のごく一部と重なっていた。発生が進むとAd4BP/SF-1発現領域は背側の領域と腹側の領域に分かれていき、Dmrt-1はこの腹側の領域と一致した。このことは、ニワトリ胚でも副腎・性腺原基から、それぞれ背側と腹側の部域に、別れていき、それぞれから副腎と生殖腺が形成されていくことを示している。さらに、st21でネフロトームの先端部分の細胞に発現するFgf9は生殖腺の形成を誘導するシグナルであると結論した。理由として第一に正常胚における発現は時間的に、空間的に生殖腺に特異的な遺伝子マーカーであるAd4BP/SF-1,cDmrt-1の発現に密接にリンクしている。第二にFgf9の異所性発現により、生殖腺の遺伝子マーカーであるAd4BP/SF-1,cDmrt-1,AMHが誘導される。第三に、異所性に形成された生殖腺の周りにはVASA抗原陽性の始原生殖細胞が移動してくる。第四に、FGF9シグナルを特異的に阻害するように、FGFレセプター阻害剤であるSU5402を染み込ませたビーズを3日胚の体腔上皮側から移植すると腹側のAd4BP/SF-1発現のみがならびにcDmrt-1の生殖腺における発現が阻害される。以上のことは生殖隆起を誘導するシグナルが中腎に存在することを初めて示したもので中腎のもつ生殖腺をつくるという生物学的重要性を示している。
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