研究概要 |
mab2111ホモ個体の眼にはレンズはほとんど形成されていなかったが、レンズの痕跡のような構造体は観察された。また、網膜は形成されていたが、その構造に乱れが生じていた。これらの眼の構造異常の原因を明かにするため、いくつかのレンズおよび網膜のマーカー遺伝子の発現を調べた。レンズマーカーのαA,γA-crystallin遺伝子は、痕跡レンズでも発現しており、mab2111ノックアウトマウスにおいても一応、レンズの分化が進行していると考えられる。一方、レンズ形成過程におけるBrdUの取り込みを観察したところ、mab2111ノックアウトマウスでは、コントロールマウスと比較して、BrdU陽性細胞の数が減少していることが明らかになった。これらの結果から、mab2111ノックアウトマウスに痕跡程度のレンズしか形成されない原因は、レンズ形成過程における細胞増殖の低下によるものと考えられる。mab2111遺伝子は、レンズプラコードだけでなく、眼胞でも発現している。レンズ形成異常がどちらの発現に依存するかを明かにするため、mab2111ホモの細胞と、野生型細胞とのキメラ個体を作成した。キメラ個体の網膜等レンズ以外の組織は、mab2111(-/-)細胞と野生型細胞のキメラであったが、レンズにはmab2111(-/-)細胞はほとんど存在しなかった。このことから、mab2111遺伝子は、レンズでの細胞自律的増殖に関わっていることが明らかになった。また、これまでに報告されているレンズの形成に関与する遺伝子とmab2111遺伝子との関係を、mab2111とPax6ノックアウトマウスを用いて解析した結果、mab2111遺伝子は、レンズ形成過程において、Pax6遺伝子によって制御され、Foxe3遺伝子の発現を制御していることが明らかになった。
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