研究概要 |
外胚葉,中胚葉に比べ,内胚葉成立の分子機構の研究は遅れている。魚類や,鳥類・ほ乳類などの有羊膜類では内胚葉は発生の途中まで中内胚葉として生じ、原腸陥入の途中にその運命を決定して,内胚葉として分化する.どのような機構で内中胚葉前駆細胞から中胚葉,内胚葉が分化してくるのかという研究はいまのところほとんどない.本年度は,有羊膜類において,中内胚葉から内胚葉が分化してくる分子機構に迫る研究を行なった. まず、ニワトリ胚の内胚葉マーカーとしてsox17を単離し、その発現パターンを調べた。その結果原腸陥入直前のst.3から将来内胚葉になる細胞に発現し、内胚葉が分化すると発現が著しく下がった。次に内胚葉の分化にどのような仕組みが関わっているのかを調べるため、st・4胚で内胚葉および内胚葉前駆細胞を全て取り去り,培養したところ、Sox17発現細胞がヘンゼン結節付近にあらわれ,その後内胚葉は完全に再生することが分かった。細胞標識実験により、本来なら中胚葉になるはずのヘンゼン結節の細胞が内胚葉になっていることも分かった。この結果から,ヘンゼン結節の細胞は中胚葉前駆細胞であるが,st.4までは内胚葉に分化するポテンシャルを持っていること,さらにSox17を発現する内胚葉前駆細胞は,そのポテンシャルを抑え,内胚葉への分化を阻害していることが強く示唆された.さらに主にNodalシグナリングを阻害するcerberusをCOS細胞に一過的に発現させ,その細胞塊を,内胚葉細胞を全て取り去ったst.4胚のヘンゼン結節のまわりに置き、その影響を見たところ、cerberus発現細胞をおいた胚では内胚葉の再生が見られなかった. これらの結果から,ヘンゼン結節にある中内胚葉はまず内胚葉前駆細胞を分化させ,その結果内胚葉前駆細胞はSox17およびcerberusを発現する。すると内胚葉前駆細胞からのcerberusがNodalシグナリングを阻害し,ヘンゼン結節の細胞が内胚葉に分化するのを疎外するものと考えられる.
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