研究概要 |
ホメオボックス遺伝子Six、その転写コアクチベーターEya、及びEyaとの共同作用因子Dachは互いの相互作用と遺伝子発現のフィードバックループを介して骨格筋、感覚器、腎臓などの器官形成を司る。本研究では、Six遺伝子欠損マウスの解析とSixタンパク質の標的遺伝子の同定を通じて、器官形成にいたる分子メカニズムを明確にする。本年度はSix1遺伝子破壊マウスでの内耳の異常形成機序、six1,Six4およびSix5の標的遺伝子同定を中心に研究を進めた。 (1)six1遺伝子欠損ホモマウスは、内耳、鼻、胸腺、骨格筋および腎臓の形成不全がみられ、生直後に死亡する。耳胞での発生制御遺伝子群の発現を精査した。耳胞腹側の遺伝子発現が消失、背側の遺伝子発現領域が拡大しており、Six1の欠損が耳胞のパターン形成に重大な影響を与えたことを明確にした。 (2)後腎間葉細胞を用いてSix1およびSix4タンパク質の標的遺伝子候補を同定した。Six1では活性化されるがSix4では活性化が弱い遺伝子、Six1では弱く抑制されるが、Six4では強く抑制される遺伝子、両者で同様に活性化される遺伝子がそれぞれ見つかった。標的遺伝子候補の中に、その欠損が腎臓や耳の形成異常につながることが知られた遺伝子も含まれていた。 (3)VP16-Six5 (野生型)およびVP16-Six5W241R (変異型)の組換えアデノウイルスを、ヒト顆粒膜細胞株KGNに感染させ、マイクロアレーに対する競合ハイプリダイゼーションを行い、野生型と変異型とで2倍以上発現レベルが異なる遺伝子を標的候補として同定した。アレイ上にスポットされた12,814遺伝子の内の2.4%、310遺伝子が標的候補として同定できた。不妊症や遺伝子欠損マウスの表現型から卵胞の形成や機能に関与することが既に知られており、性腺機能低下症との関連が強く示唆される遺伝子が標的遺伝子として同定された。
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