研究概要 |
Wntファミリーを中心に,肢芽シグナルセンターに由来する分子の骨格パターン形成における役割を調べ,次のような点を解明した。 Wntに結合して活性を阻害するFrzb-1の過剰発現によって骨格の短縮と関節の融合が見られ,軟骨細胞の成熟遅延,基質の石灰化阻害やメタロプロテアーゼの発現抑制が起こる。Frzb-1の過剰発現と優性欠損型のLEF-1では培養軟骨細胞に対する効果が類似しており,軟骨細胞は未成熟の状態に維持される。一方,Wnt-8の過剰発現の効果と構成活性型LEF-1の効果は類似しており,これらは軟骨細胞の成熟,肥大化,石灰化を顕著に促進した。βカテニンの抗体染色によると未成熟増殖層および前肥大層の軟骨細胞で細胞質への局在が見られるが,石灰化した肥大軟骨層では核への局在が顕著である。Frzb-1の過剰発現では軟骨細胞でのβカテニンの核内局在が阻害される。 四肢の骨格形成過程ではWnt-5b,Wnt-11が前肥大軟骨層で発現し,Wnt-5aは関節と軟骨膜で発現し,Wnt-4は初期の関節と一部の肥大軟骨層で発現している。これらのWntはそれぞれ発生段階と位置に応じた発現を示し,軟骨形成と軟骨細胞の分化に固有の役割を持つと思われる。RCASによる過剰発現で各々の機能を比較すると,Wnt-4は軟骨形成の開始を阻害し,軟骨細胞の終末分化を促進する。一方,Wnt-5a,Wnt-5bは初期の軟骨形成を促進し,終末分化を逆に阻害する。Wnt-5bとWnt-11の発現はIhhの発現と一部重なっているので,これら相互関係を調べたが,Ihhによる軟骨形成にはWnt-5b,Wnt-11は関与しておらず,独立の経路で作用していることが分かった
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