研究概要 |
ニワトリ胚の予定肢芽領域にマウスWnt-3aを過剰発現させると異所的なapical ectodermal ridge (AER)、が形成されるが,ニワトリWnt-3aを過剰発現させてもAERは誘導されず,同じWnt-3aでもニワトリとマウスで活性が異なる。その原因を究明するため,細胞内βカテニンタンパク質の動態をWestern法で調べると,マウスWnt-3aの発現細胞ではWnt/βカテニン経路が活性化されていたが,ニワトリWnt-3aでは細胞質内にβカテニンが検出されなかった。マウスのN末端側配列をもつニワトリWnt-3aとのキメラタンパク質の発現ではβカテニン経路が活性化されるので,ニワトリWnt-3aがWnt/βカテニン経路を活性化できない原因はN末端側のシグナルペプチド領域にあることが分かった。 次にWnt-3aに代わる因子としてWnt-10aがβカテニン経路を活性化するAER誘導因子である可能性を検討したRCAS-FGF10導入細胞をステージ12〜13胚のわき腹に移植し12〜24時間後のWnt-10a、Wnt-3aの発現を調べたFGF-10によって12〜24時間後にWnt-10aの発現が異所的に誘導されることはなかった。またFGF-10によって誘導されたWnt-3aの周囲にWnt-10aの発現が誘導されることもなかった。したがって,Wnt-10aのAERでの発現はこれらFGF-10やWnt-3aによって直接的に正の調節を受けているのではなく,別の因子によって制御されていると考えられる。
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