1.新たに始めた花虫類イソギンチャクの仲間、Nematostellaのプラヌラ幼生の変態を制御する内在性の神経ペプチドLWamideファミリーの構造と機能の進化的保存性:ヒドラLWamideファミリーペプチドがプラヌラ幼生の変態を促進した。そこでNematostellaからLwamide遺伝子をクロン化した。遺伝子はヒドラと同様Lwamideペプチドをタンデムにコードする構造をとっていた。 2.コリナージックシステムから見た神経系の進化:ニコチン性アセチルコリン受容体(nAchR)は古典的神経伝達物質アセチルコリンをリガンドとする受容体であるが、腔腸動物では古典的神経伝達物質は無いか、働いていないというのが一般常識となっている。ところがわれわれはヒドラから7種のαタイプnAChR遺伝子と1種のコリントランスポーター(ChT)遺伝子を得た。これら遺伝子は芽体の予定触手域の外胚葉上皮で強く発現し、神経での発現はない。薬理学的な実験で、ニコチンは触手形成を増進させた。以上の結果は、ヒドラにコリナージックシステムが存在し、それは、神経系では無く、頭部形成に関与することを示唆する。一方、扁形動物のプラナリアではnAChRが神経系で発現していることが知られている。従って、コリナージックシステムは神経系を持つ最も下等な多細胞動物の腔腸動物では形態形成に関わっていたが、一段上位の扁形動物へ進化する過程でその機能が神経系へと移行したと考えられる。
|