脊椎動物の体幹部の形態形成機構を分子レベルで理解するために、ゼブラフィッシュ突然変異体のスクリーニングを行い、尾芽または尾部の形態異常、体節の分節化の異常、脊索の異常を示す変異体など42系統を得た。同定した変異体の中には、これまでに報告されていない新規のものが含まれていた。特に、体節の分節化に異常を示す変異体は14系統(相補性テストによって9遺伝子座に分類された)得られており、うち7系統(5遺伝子座)が新規であると考えられたので、このグループの変異体の解析から行なうことにした。表現型解析から、5系統は頭部側数個の体節の分節化に特異的に異常をもち、尾部側の体節の分節は正常であった。さらにそのうちの1系統では、頭部側の体節の背側だけが癒合していた。これまでに頭部側の体節の分節化の分子機構についてはほとんど報告がなく、これらの変異体が得られたことで、その分子機構が明らかになることが期待されるとともに、分節化について背腹での差という全く新しい視点がもたらされた。残りの2系統については、頭部側の数個の体節は正常に形成されるが、尾部側の体節が癒合するという表現型を示したが、このとき頭部中枢神経系での細胞死を伴っていた。分子マーカーを用いた詳細な解析の結果、これらの変異体ではそれぞれFGFシグナルとDelta/Notchシグナルの伝達機構に異常があることが推測された。これらの変異体の解析によって、体節形成におけるFGFシグナルやDelta/Notchシグナルのより詳細な役割が明らかになっていくことが期待される。これら(5遺伝子座)の新規の分節形成異常変異体のうち4種類については、原因遺伝子同定のために連鎖地図上へのマッピングを行い、変異から1〜数cMという非常に近傍のDNAマーカーを同定した。残りの1種類もマッピングを行なうための準備段階に入っている。
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