研究概要 |
CNR分子群は大脳皮質形成機構に関わるReelin分子の多重受容体として機能していることが示唆されており、CNR分子群の分子機能解析により大脳皮質層構造形成機構の一端が明らかにされることが期待される。本研究では、各脊椎動物種におけるCNR遺伝子のゲノム構造解析、発生生物学的解析を行い、脳の形成と進化に関するCNR分子機構の解明を目的とし解析を行った。各脊椎動物種におけるCNR遺伝子のゲノム構造解析においては、マウス、ヒトCNRにおいては既に報告されており、今回ゼブラフィッシュ、ニワトリ、ラットCNRゲノム構造の解析を行った。ニワトリおよびラットCNRゲノム構造はマウスとほぼ同一であるがアミノ酸配列の比較から種特異的なCNR分子構造の形成が示唆される。また、ゼブラフィッシュCNRゲノム構造はマウスおよびヒトのCNRゲノム構造と類似した構造であった。マウスでは14種類のCNR遺伝子可変領域がクラスターを形成して存在するが、ゼブラフィッシュでは13種類のCNR遺伝子可変領域が同様にクラスター構造を形成しており、また、細胞内領域はマウスやヒトのCNR遺伝子と同じく3つのエクソンに分かれて存在していた。しかし、マウスCNRゲノム領域は約225Kbであるのにたいして、ゼブラフィッシュCNRゲノム領域は約105Kbと短縮された構造であった。これは可変領域間のイントロンが短いことによる。マウスCNR遺伝子可変領域では、分子系統樹で大きく2つのクラスターに分かれている(mCNRv1〜mCNRv12グループとmCNRc1,mCNRc2グループ)が、ゼブラフィッシュでは、mCNRc1に相同な遺伝子配列は無く、mCNRc2に相同なzCNRcのみが存在していた。この違いはCNRcグループの分子機能を考える上で大変興味深い。また、mCNRsはReelinの多重受容体としてマウス大脳皮質層構造形成機構に関与していることが示唆されているが、ゼブラフィッシュCNRにおいては、mCNRで認められたReelin結合配列は認められなかった。さらに、CNR遺伝子はマウス、ヒトおよびゼブラフィッシュの各脊椎動物で類似したゲノム構造であったが、分子構造比較解析の結果、各脊椎動物のCNRは種特異的な遺伝子およびアミノ酸配列をしており、これらの結果から、系統進化の過程での脳構造の進化においてCNR遺伝子の種特異的分子進化が関与している可能性示唆が示唆される。また、各CNRの分子機能解析に用いる各CNR特異ウサギポリクローナル抗体およびマウス、ラットモノクローナル抗体作製に成功した。今後、作製された抗体を用い脳形成機構におけるCNR分子群の分子機能解析を行う。
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