(CNR1はβ1 Integrinを介した細胞接着活性能を有する) CNRはsynaptic Protocadherinファミリーに属する多様化した分子群であるが、その接着活性についてはほとんど知られていない。今回、HEK293T細胞に発現させたCNR1蛋白質の一部は細胞膜に存在し、Ca依存的細胞接着能を増加させることを見いだした。しかしながら、CNR1細胞外領域とヒト免疫グロブリンFc領域との融合蛋白質(CNR1 EC-Fc)を用いたin vitroでの強いホモフィリックな接着活性は認められなかった。さらに、CNR1を発現させていない、HEK293T細胞がCNR1EC1領域とヒト免疫グロブリンFc領域との融合蛋白質(CNR1 EC1[RGD]-Fc)との接着し、EC1内のRGD配列をポイントミューテーションによりRGEに変えた融合蛋白質CNR1 EC1[RGE]-Fcにおいては接着しなかったことより、接着性にEC1領域のRGD配列が関与することが明らかにされた。また、RGDSペプチドや抗β1 Integrin機能阻害抗体などのIntegrin分子機能阻害により、HEK293T細胞とCNR1 EC-Fcとの接着性は阻害される。また、CNR1を発現させたHEK293T細胞におけるCNR1蛋白質の局在と内在性のβ1 Integrin蛋白質の局在は一致し、さらに、シナプス発達過程にあるマウス小脳分子層におけるCNRとβ1 Integrinの局在様式は重なっている。 以上の結果から、CNR1はβ1 Integrinとの間でヘテロフィリックなCa依存的な細胞接着活性を有することが明らかとなり、また、CNR-β1 Integrin相互作用による脳構造形成機構およびシナプス形成機構への関与が示唆される。
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