研究概要 |
ショウジョウバエの複眼形成では、多数の細胞の分化が同調して生じることから細胞分化を段階的に観察するのに適している。これまでの解析から、光受容細胞の発生過程で働く上皮増殖因子受容体(Egfr)シグナル伝達の下流で機能する転写コリプレッサー複合体ebiを同定している。本研究ではebiにより発現抑制される因子の同定およびその機能解明を目的として解析を行った。その結果、ebiの機能により最終分化した光受容細胞で発現抑制される因子としてtaco(a target of the corepressor complex)が得られてきた。tacoはC2H2型のZnフィンガーを有する転写因子をコードしており構造上、哺乳動物で神経特異的レプレッサーとして知られるNRSF/RESTに類似した因子であることがあきらかになった。tacoのZnフィンガードメインはNRSF/RESTと相同性が認められることからtacoがNRSF/RESTの認識配列である21bpのNRSEに結合する可能性を検討した。ゲルシフトアッセイの結果、TACOのZnフィンガードメインとGSTとの融合蛋白質は配列特異的にNRSEに結合することがあきらかになった。ショウジョウバエにおけるtacoの標的遺伝子を同定する目的で、TACOのDNA結合活性とNRSEとの相同性を利用した検索をおこなったところ、NRSF/RESTの標的遺伝子として知られるヒトnicotinic ACh receptor β2,Dopamin receptorそしてEther-a-go-goのホモログを含む20個の標的遺伝子の同定に成功した。標的遺伝子のほとんどは神経系で機能していることから、tacoは神経細胞の発生あるいは機能発現に重要な役割を持つことが予想された。
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