研究課題
初期発生において、転写制御のみならず、mRNAのプロセシングや輸送の制御も極めて重要な役割を担っていると考えられる。高次神経系においても、神経細胞の興奮に伴ってスプライシングパターンが変化したり、シナプスへ特定のRNAが輸送される現象が観察されているが、その分子機構や生理的意義は不明のままである。リン酸化などの蛋白修飾反応は、転写過程だけでなくmRNAプロセシングや輸送のシグナル制御過程でも重要な役割を果たしていると想定される。ヒトゲノムには現在約700個のRNA結合蛋白質が知られている。我々は特にSRタンパク質およびそのリン酸化制御に着目し、線虫やウイルスを標的に生物学的意義を求めた。SR蛋白質ファミリーはSer-Arg反復配列からなるRSドメインを共通に持ち、このRSドメインのリン酸化は、SRPK、PRP4、Clk等の特定のキナーゼが行う。Clkによるスプライシング制御機構を解析するために、化合物ライブラリーをスクリーニングし、Clk1/StyとClk4を特異的に阻害する化合物TG003を得た。このTG003は試験管内でのSF2/ASF依存的なスプライシングを阻害した。また、細胞内でもSRタンパク質のリン酸化レベルを低下させ、核スペックルの解離を抑制し、Clk1/Sty依存的な選択的スプライシングを抑制した。Clk活性亢進によりスプライシング異常や発生異常が惹起されることから、TG003はそうしたスプライシング異常に起因する疾患に治療薬となる可能性があり、現在、海外の複数の研究グループと共同研究が進行中である。また、隣接するエキソン同士を順次連結する秩序だったスプライシングの分子機構を解明するため、分裂酵母においてエキソンスキッピングを引き起こす変異株を新規スクリーニング系により2種類(ods1,2と命名)分離した。それらの原因遺伝子はRSドメインをもつRNA結合蛋白質U2AF^<59>及びU2AF^<23>をコードしていた。ヘテロ二量体を形成するこれら2種類の因子によるブランチ部位認識がイントロンの認識と順序だったスプライシングに必須であることが示された。
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