研究課題
本研究は翻訳過程における未解決の根本問題を、動物ミトコンドリア(mt)の翻訳装置の特殊性を活用することにより解明しようとするものである。ミトコンドリアセリルtRNA合成酵素(SerRS)は、共通構造のもたない2種類のセリンtRNAを認識する酵素である。これまでの我々の研究でこの酵素はそれぞれのtRNAを異なる機構で認識していることが示されており(dual mode recognition)、酵素学的な見地からも構造解析の興味深い対象である。本年度は、SerRSの結晶条件を検討し、二つの条件で構造解析に十分な大きさの結晶を得た。シンクロトロンで測定を行ったところ、そのうちの1つの結晶が1.57Åの回折が得られ、molecular replacementによる構造解析に成功した。ホモダイマーであり、Cドメインの触媒中心には基質であるセリンとATPが反応したセリルアデニレートがはっきりと観測することができた。また、興味深いことに、アミノ酸配列レベルではホモロジーの低かったNドメインに、すでに構造が解明されている好熱菌の酵素と同様、特徴的な長いαhelixが存在していた。されに、N末には特徴的なαhelix(Distal helix)が1本追加されていた。このDistal helixはもう一つのモノマーのC末テイルと特徴的な水素結合を形成していた。系統的に変異を導入した組換えSerRSを用いた生化学的な実験により、Distal helixとC末テイルの保存残基が2つのtRNAの認識に強く関与していることが示された。さらに、2種類のセリンtRNAの認識に関与するアミノ酸残基に明確な相違が見られたことから、この酵素は2つのtRNAを異なる認識様式で結合するdual mode recognitionが構造生物学的に示すことができた。
すべて 2005 2004
すべて 雑誌論文 (5件)
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