研究課題/領域番号 |
14035206
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
渡辺 公綱 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物情報解析研究センター, 研究センター長 (00134502)
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研究分担者 |
岡田 典弘 東京工業大学, 大学院生命理工学研究科, 教授 (60132982)
鈴木 勉 東京大学, 大学院工学系研究科, 助教授 (20292782)
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キーワード | 線形動物 / ミトコンドリア / EF-Tu / tRNA |
研究概要 |
線形動物ミトコンドリアでは、通常のクローバーリーフ型とは異なった、T armが欠けたtRNAとD armが欠けたtRNAという異常な形をした2種類のtRNAが存在することが知られている。これらのtRNAに結合するEF-Tuとして、通常の翻訳系ではEF-Tuは1種類であるのに対し、2種類の異常なtRNAそれぞれに結合する2種類のEF-Tuが見つかった。このうち、D armの欠けたtRNAに結合するEF-Tu(EF-Tu2)は、一般的なEF-Tuと比較したときにアミノアシルtRNAのアミノ酸部分との結合に関わるアミノ酸残基の保存性がほとんどないことから、アミノ酸認識様式が通常のものと異なることが予想された。さらに、EF-Tu2が結合するD armの欠けたtRNAは、セリンtRNAのみであることから、我々は、EF-Tu2はセリルtRNAのセリン部分を特異的に認識する新しいタイプのEF-Tuであると予想した。 このことを証明するために二つの実験を行った。加水分解プロテクションアッセイでは、2種類のアミノ酸(セリン、アラニン)をチャージ出来るようなAscaris suumミトコンドリアtRNASerUCU変異体を作成し、Ser-tRNASerUCUとAla-tRNASerUCUに対するEF-Tu2の結合活性を比較したところ、EF-Tu2はSer-tRNAとは結合したが、Ala-tRNAとは結合しなかった。また、Ser-tRNASerUCUと化学合成法で調製したVal-tRNASerUCUとのEF-Tu2の結合に関して競争実験を行った。この結果、Ser-tRNAに対するEF-Tu2の結合は過剰量のVal-tRNAによってもまったく影響を受けなかった。これらの実験からEF-Tu2がセリン特異的であることが証明された。 さらに、一般的なEF-TuにおいてアミノアシルtRNAのアミノ酸との結合に関わる残基をEF-Tu2の対応する部分と組み換えた変異体を作成し、アミノ酸置換によってセリン特異性を一般的なEF-Tuに移せるかどうかを検証した。セリン特異性を持つようになったT.thermophilus EF-Tu変異体と、セリン特異性を持たなくなったC.elegans mt EF-Tu2変異体を得ることができており、その結果からかさ高いアミノ酸残基で結合ポケットが狭くなり、フェニルアラニンなどのセリンより大きなアミノ酸側鎖を排除していると考察できる。また、セリンとアラニンの識別に関与する残基も特定することに成功した。本成果は原著論文として投稿中である。
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