研究概要 |
リボソーム中のGTPaseセンターは、遺伝情報の翻訳段階で必要となるGTP加水分解反応に寄与する機能中心であり、翻訳機構の動力を提供している。昨年度までの本研究により、動物細胞リボソームのGTPaseセンターを構成するリボゾームタンパク質はP0,P1,P2であり、これらが安定な複合体を形成することを明らかにしてきた。平成15年度は、蚕P0,P1,P2遺伝子の組み換えを行い、大腸菌発現系を構築するとともに、各Pタンパク質の様々な末端欠損変異体を作成した。そして、発現タンパク質を用いた相互作用の解析から複合体構造に関して以下の点が明らかとなった。 1.P1とP2は双方のN末端ドメインを介してヘテロダイマーを形成する。 2.P1-P2ヘテロダイマーのN末端側がP0との結合に寄与している。 3.316個のアミノ酸からなるP0分子上の210-235残基部位が一組のP1-P2ヘテロダイマーの結合に寄与し、さらに252-261残基部位がもう一組のヘテロダイマーの結合に寄与する。 4.P1-P2ダイマーとP0の210-235残基部位だけとの結合は不安定で安定な複合体形成にはもう一方の252-261残基部位が必要である。 5.P0とP1-P2の結合性とP0と28SrRNA間の結合性は互いに協調的に増強し合う。 以上の研究により、P0-P1-P2間相互作用とこれがリボソーム機能に影響する仕組みを理解し得たが、この詳細な構造基盤を解明するためにはタンパク質複合体の結晶構造解析が必要である。そこで本年度は、比較的結晶化しやすいと思われる高度好熱性古細菌のP0,P1/P2相同タンパク質の発現系作成にも取り組み、現在までに各タンパク質の発現、精製さらにin vivoでのタンパク質複合体形成に成功している。
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