「RNAナノ構造体の人工的構築」を目的に、コンピュータープログラムにより分子デザインし、実際に構築したself-folding RNAを基本骨格として、分子エンジニアリングを行い、反応部位と触媒部位を新たに組み込んだRNAをデザインした。触媒部位は30のランダムな塩基配列を持つヌクレオチドプールとし、このプールからのin vitroセレクションの条件を設定、セレクションを行い、de novoで分子構造をデザインし、そのデザインされた分子に、活性中心を搭載して実際にRNAリガーゼ活性を有するRNAを作成することに成功した。また、つづけてこの人工リボザイムに、さらに機能を付け加えることを試み、シス型のものからトランス型のものへと分子変換に成功した。さらには、新たに小分子レセプター機能をもつ構造ユニットを組み込みアロステリックにリボザイムを制御することに成功した。これは、天然のリボザイムの機能と構造の相関関係を解析し、それを蓄積して開発した技術を実践的に応用することができた初めての例となった。 このRNAの分子デザインの技術をさらに進めることにより、RNAとタンパク質の複合体であるRNPの分子デザインと作成をおこない、RNA骨格上に固定した二つの構造既知のタンパク質の間でFRETを行わせることに成功した。また、FRETの効率をRNAのデザインにより制御できることを示した。この基礎技術の開発の成功は、将来、シンセティックバイオロジーの新分野を切り開く為に有効であるものと期待される。
|