本研究では、「RNA情報発現系の時空間ネットワーク」の基盤となるRNAの核から細胞質への動きを、核外輸送因子群による「RNAの身分証明」過程という概念で捉え、その様々な制御機構を明らかにすることを目指している。 (1)今回、mRNA型のイントロンを別種のRNAであるUsnRNAに挿入すると、UsnRNAの核外輸送経路がmRNAのそれに切り替わる事を、複数の判断基準を調べることにより完全に証明した。この事は、イントロンがmRNAの核外輸送における身分証明書的特徴として機能していることを意味しており、mRNAの身分証明過程の重要な一端が明らかになった。この結果は、Molecular Cell誌に論文発表した。今後、イントロンに依存しないようなmRNAの身分証明書的特徴を検索して行く計画である。 (2)32Pで標識したtRNA連結型のリボザイムをT7プロモーターを用いて調製し、それらをアフリカツメガエルの卵母細胞核に微量注入して、5'および3'側に余分な配列を持つtRNA連結型リボザイムが核から細胞質に輸送されるかどうかを調べたところ、余分な配列を持つtRNA連結型リボザイムは細胞質に輸送されなかった。しかし、これらの余分な配列を持つリボザイムはtRNA核外輸送因子Xpo-tと特異的に結合することが、pull downおよびウエスタンブロット実験により確かめられた。以上の結果は、核外輸送におけるtRNAのIDの認定が、Xpo-tとの結合だけで規定される訳ではない事を示唆している。
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